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特別対談:大石哲之氏(1)

In ビットコインニュース
7月 14, 2016
7月 15, 2016
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ビットコイン2.0がもたらす変化について

ブロックチェーンを活用した新技術・新しい発想としてBitcoin2.0と言われる分野に注目が集まっている。ブロックチェーンの活用でどんな未来が実現可能なのかお二人に伺った。

Bitcoin2.0以降の技術革新で、今後どのような世界になっていくと思われますか? また私達の生活にどのような影響が現れると思われますか? 例えば日本は紙・印鑑社会です。利用者、管理者双方に非効率な作業が発生していることもあります。これらの非効率性を解消する為のブロックチェーンを活用した新技術・新しい発想を具体的にお話いただける範囲でご教示下さい。

「政府の機能の分散化」

大石哲之

大石哲之氏

大石哲之氏(以下、大石)まず、そもそも印鑑社会とか紙社会とか大嫌いで、アメリカとかで契約すると、だいたいメールに返事だけでOKとか、紙にサインしたものをPDFで送ればいいとか。日本だけ印鑑とかあって、何度もやり取りしてほんとばかばかしいなと。そこらへんの業務とかが全部良くなるといいなと思っているんですけれども。一番大きなところは、ビットコインがお金に関する脱中央集権化、分散化だとすると、2.0はもうちょっと広がってガバナンス全体に関する分散化という風に思います。端的なものではガバメント、政府の機能の分散化みたいな感じで。例えばIDの発行であるとか、届出関係全般であるとか。印鑑証明がそのときにあるのかどうかわかんないですけれど、そういうものであるとか。マイナンバー制度みたいなのもやってますけれども、とにかくああいった仕組み、認証とか、許可とか、登記とかの仕組みがブロックチェーンで大きく効率化する余地があると言うか、対象となる範囲だなと思っています。

加納裕三氏(以下、加納)賛成です。2.0自体の定義と言うのが非常にあいまいで、私は単に通貨以外の使い方、将来の技術という意味で捉えています。通貨以外の使い方というのは、イーサリアムで契約で使うとか、大石さんがおっしゃっているようにマイナンバーとかいうのがあって。根本的には、最初まず通貨であるというところから始まり、アセットを交換する、株、債権、FXでもなんでもいいんですけれども、という概念になり、次に契約という概念があれば、契約の方が下位の概念で、例えばデリバティブっていうのは契約なんですけれども、その上位概念に何かアセットというのがあるので、契約ができてしまうのであればなんでもできます。もっと下のレイヤーには、何かモノが永遠に記録され、改竄できないことが分かっている概念があって、誰にでも見られる、改竄できない、永遠に残っている、かつ中央集権でないという新しいものができました。この応用範囲は非常に広いのかなと思っています。

私は単に中央集権だからダメっていう考え方はそんなにはなくて、中央集権型であったほうがいいシステムと分散型であったほうがいいシステム、システムっていうのはITシステムだけだはなくて社会システム全体という意味で両者あると思っています。それは取捨選択していけば良い。その分散型での一つの可能性を示したのがブロックチェーンなので、それには大いに意義があると思っています。

実は僕もずっと米系の投資銀行にいたのでサインで済ませていました。たまに日本の契約書を見ると判子を押す欄が8つくらいあって、これはすごいな。これが日本の稟議システムかと。とはいえ、これってマルチシグじゃんという考え方もあって。複数あるという概念は別にいいと思うんですよ。アメリカでもコサイナーとの二つサインがないと有効にならないとか。じゃあ、サインをするという行為と印鑑を持ち出すという行為の差でしかないですと。まぁ、どれだけハンディかというところで。一長一短があって。確かにサインや、メールでOKとするほうが楽なんですが、偽造の可能性等があります。判子は判子でいいところは僕はあるなぁと思っています。でも、さすがにマルチシグと言えども8/8はないでしょうと。シグネチャーする為に判子というハードウェアが必要で、ハードウェアウォレットを持ってこれないと全員がマルチシグできないという状況なのが判子です。

結局、僕は利便性とセキュリティとのバランスを取るべきだと考えており、判子システムはまさにブロックチェーンシステムに置き換わってもいいと思っていて、法的にそれもそんなに問題ではない気がしています。何かしらの形で公的・私的文章が証明できるのであれば裁判所に持っていけば有効なんじゃないかと、それの一つがブロックチェーンに書いてあるからという未来がやってくるんじゃないかなと思っています。

「一番強力なのは証明の部分」

大石既に電子署名は法律的に有効だし、会社作るときも定款とかは電子定款でOKです。だからブロックチェーン上に何か載せたら、それはパブリックに載せたものであると言うか、ブロックチェーンに載せたことが最大の証明になるっていう概念がそのうち出てくる気がしますね。証明の話で言うと、やっぱりブロックチェーンの一番強力なところは証明の部分ですよね。基本はタイムスタンプを押して改竄できない記録を順番をつけて記録すると、これを分散型でやるというのがブロックチェーンの発明の肝のところだと思うんですけどね。ナカモトサトシの論文にもそう書いてありますと。そういうシンプルなものと考えるといろいろな物に応用可能性があるなと。例えば僕は一年位前にそれが面白いなと思って、ブロックチェーンのOPリターンという余白の部分に40文字の文字を埋め込んで、トランザクション出して、マイニングされると記録が残るっていうサービス、Proof of Meというんですが、須藤さんというかたに協力いただいて試しに作ってみました、実験的にどういうものができるのかなっていうことで。まぁいろいろなことができると思っていて、文章のハッシュを入れるとか、GPSで位置情報を記録して緯度・経度みたいに入れるとか。みんながどういう風に使うかなと思って自由に開放したところ、まだみんな何に使っていいのか、どうしてこれが証明になるのか分からないのか、ちょっと早すぎた。「こんにちは」とか「テストテスト」とかになって。「テストテスト」がブロックチェーンに記録残っちゃったとか「うんこ」とかなんとかがブロックチェーンに残ってそれもまぁなかなか味があるなあとは思ったんですけれども。

それから僕もこのあいだついに結婚したんですけれども。

加納おめでとうございます。

大石ありがとうございます。やっぱり、結婚制度とか、色んなこの手の制度はちょっと古いですよね。いろいろ古いものがあって、制度の登録はまた別のはなしではありますが、登録の部分はブロックチェーンに書いておこうと思って。いついつ結婚しましたみたいなのをブロックチェーンに書こうと思ってですね。これがブロックチェーンの使い方の最たるシンボルとして世の中に伝えられれば良いなと思って書き込んだんですよ。ネットの記事にもしてもらったりとかして。これは何なんだという話で。これの意味が分かってくるというのが日本のビットコインやブロックチェーンの理解の近道というか、そうなってくれる日が来ることを願いたいですね。

加納まさに大石さんは結婚しましたとブロックチェーンに書いていたわけですが、区役所のデータベースに婚姻届を出して書くのと何が違うんだと。法的な裏づけがあるかないかというところだとは思っています。当然法的に認められた婚姻制度であればいろいろな義務が生じるし優遇制度もあるし、まぁ絆もあるだろうけれども。第三者に婚姻しているかどうかを証明するだけでいいのならば、ブロックチェーンでもいいだろうし、それに伴う法的、もしくは国のサービスを受けたいのであれば婚姻届はブロックチェーンに提出してしまうという形があってもいいのかなと思います。これは拡張性があって、そうすると戸籍制度がどうのこうのとか個人に限らずありとあらゆる情報を一旦ブロックチェーンに移す、当然個人情報が漏れるとまずいのでハッシュ化するなり、暗号化するなりで分からないようにすれば特段問題ないと思っています。

大石社会の制度と現実と言うのは常にいろいろと差があって、このあいだ米国では同姓婚が認められたりということがありましたけれども、いろいろ社会によってそこらへんがありますと。結婚とか、戸籍の問題と言うのは非常にパーソナルな問題で、だけれども住んでいる場所とか地域とかの慣習や習慣に囚われていて、自分のもっているものとそういうのが違うと、でただ一つのオーソリティしか選べないというのが今あるというのはあまり良くないなと思っている。国の法執行の部分に入る範疇もあるかもしれないけれども、そうでない部分もあるので、例えばIDの証明とか結婚であるとか、ジェンダーの問題とかに関しては、国に届けて国が認めてくれないとあれっていうよりももうちょっとユニバーサルなものにやったほうがいいんじゃないかなと思っていて、ブロックチェーンはやはり下手をするともっとワールドワイドで国とか地域とかそういうものを越えて何か証拠を残せる非常に強い基盤になる可能性があって、特にビットコイン、ブロックチェーンはすごく、非常にセキュアだし、何十年か実績を積めばよくわかんない政府の、ころころ政権変わるところよりもいんじゃないかとか思ってですね。公共に使える別の新しい基盤、全世界の人が使える新しい公共の基盤が出てきたと、そういうものが出てきたというイメージで捉えると、政治の話はおいておいて、すごくいいんじゃないかと。そこにいろんなことが記録できたりとか、そこで契約ができたりとか、そういうことができるとまた新しい仕組みが世の中に出現してくるなと、そういう気がしています。

加納結婚も一つの契約なわけで、契約したり、契約解除したり。という行為なわけで。結婚も含めたありとあらゆる契約というのをブロックチェーンに移していくと。契約の型自体はたくさんあって、例えば会社経営をしていると良くあるのがNDAという守秘義務の契約書を交わすことが多々あります。これが非常に面倒くさい。これもう定型化して、守秘義務契約A・B・Cぐらいに分けてブロックチェーン上でこれはAです、サインして下さいと。というワンクリックで守秘義務契約が結べるといいなと思ったり。あとは契約がもともと曖昧であったり、履行しなかったりということが会社を経営していたらあるとは思うんですが、それが第三者に見える形で何かあったら公開できるというのが、契約を履行しない人に対して非常に強力な効果があるのかなと思っていて。例えば、前あったOKCoinとロジャーの問題知っています?

大石知ってます。

加納あれこそ、ブロックチェーンでやって欲しかったんですけれども。ドメインの使用権みたいなところでもめていて、で実際の契約の内容みたいなのをロジャーが公開したと。おもしろかったのが、彼の主張によるとドキュメントのサムプリントみたいなのも公開していて、OKCoinがやったという契約書のサムプリントと違っていると。両者のドキュメントが違うということが一旦分かりました。どっちが正しいというのが私にはなんとも言えないんですけれども。ロジャーの主張によると改竄したんじゃないかと。まさにブロックチェーン上でやってほしかったなと。

大石そうですよね。その方が白黒はっきりすると。

加納白黒はっきりすると、もう契約した瞬間にまさにそのサムプリントをさっきおっしゃっていたOP_RETURNにぶちこむと。40バイトってあんまり書き込めないのでほとんどの利用の仕方がハッシュを入れるみたいな。40バイトのハッシュは相当強力なので、とにかく契約を簡単にしたい、簡単なのに非常に強力な証明力を持っているという形が実現できるかなと思っています。

大石OP_RETURNは今のビットコインコアのバージョンから80バイトに戻ったんですよ。なのでだいぶ入ると、いろいろ入ると。現実的にサービスでいうと幾つかそういうのも出てきてますと。例えば、証明のサービスでいうとファクトムというのがあって、それはあらゆる文章でもなんでもいいんですけれどもとにかく突っ込むと全部ハッシュハッシュツリーを作って、最終的にルートハッシュだけを10分に一回ビットコインのブロックチェーンに書きます。なので現実的に文書証明みたいなやつの応用というのは、いくつかサービスが立ち上がってきていて、動きそうな感じです。次に大事なのはブロックチェーンに紐付いた個人IDみたいなのを作る。ということができるというサービスもできていて、まぁいわゆるネット上のIDの証明の問題っていうのはなかなか面倒くさいもので、今身元確認作業というのは個別の会社が別々にやっていて、全部の会社に運転免許書のコピーをそれぞれ送らないといけないみたいになってるわけです。それでヘマをする会社が流出させたり。もしブロックチェーンのIDサービスができて、それがいろんなところに使えて、例えばそれに反社会的でないことが分かるという事であればプライバシーを保ったままある程度サービスを使うといったことが可能となるので、個人IDのところはすごくブロックチェーンの技術を使って革命的なことが起こるなっていう風に思っています。

加納マイナンバーの世界版みたいなイメージで。情報漏洩とか、システムのハッキングの問題とかいろいろあるんですが、そもそも最初から公開されているという前提のシステムに、どう個人情報を守るかという発想で実装していったほうが僕は安全だと思っています。クローズなシステムありきでみんなが頑張って漏れないようにするっていう努力、それは結構大変ではあるので。公開されても当然です、最初から公開されています。ただ、本人と関係者しか読めないような工夫をしていくと。

大石そうですよね。そういう発展のほうが健全ですよね。全部の情報をマイナンバーみたいに集中管理して、そのセキュリティの確保を、運用でカバーするっていうんですかね、アクセスするには上司の許可得なさいとか、監査の人を雇わないと行けないとか、何人以上の人を貼り付けなさいとか、違反したら罰則しますとかの法律とかでガチガチガチってやるのがいままでのセキュリティの考え方でした。まぁ今まではそういう風にやるしかなかったというのがしょうがないですよね。でも、そういう発想とは別の方向性で考えることもできてきたねと。非常におもしろいことがおこるのではと思いますね。

「低コストで便利な世界」

加納その話で言うと、日本は人が頑張る、頑張ることによって何かクオリティを守るというのがあって、で当然人間なので失敗します。それを前提としていないような社会システムだったり、ITシステムが多いような気がしています。アメリカの証券会社で働いていたとき、決済するときにおもしろいのが、ぴったりじゃなくても決済できちゃうんですよね。例えば何百万ドルとかの決済をしているときに最後の数セントとか1ドル以下のものって誰も気にしないわけですよ。でもちょっとずれたりするわけですよ。何かって言うとコンピューターがどこでラウンドして、どこで切り上げてみたいなのをきっちりやらないと絶対にぴったりにはならなくて、でそのシステムが小数点以下が5桁なのか6桁なのかでお互いのシステムが違ったりしますと。でアメリカがすごいなぁと思うのがもう大体でOK。で日本はちょっとしたミスも許されないというところに非常に社会的コストがかかっているんじゃないかなと思っていて、1円玉を探す為に銀行員が夜遅く残ってやるっていうのは、教育とかそういう観点から見たら必要なんでしょうが、実務的に1円を探す為に人件費をいくら掛けているんだというところになっていって、ある程度外国人のおおらかさというか発想というのは取り入れてもいいのかなと。

大石そうですよね。あのアメリカのレジとか小銭のプールがあって、小銭が足りないとそこから払えますよね。

加納あとはタクシー乗ったときに、必ず僕らに不利なほうに丸められておつり渡されるっていう。あ、ぴったりくれないんだっていう。あれは日本人的には驚きです。まぁ、それぐらいでいいと思うんですよね。99点を100点にするのってすごい労力が必要なので、ミスは絶対するわけだからミスを前提としたシステムを作っていくと。

話を戻すと、クローズなシステムと言うのはミスを絶対許さないシステムになっているにもかかわらず、ミスは発生しますと。誰かがマルウェアみたいなのを踏んでしまう、メールで何かをやってしまうと。まぁbitFlyerの話になると、可能性はゼロにはできないと思っているので可能性をまず減らす対策をする、なったときどうするかを対策をする。でその後どう改善するかって言うのをずっと考えていて。とにかくマルウェアを踏まないように仕事してくださいっていうのであればもう多分インターネットやめたほうがいいっていう。怖くて何もできませんと。一回でも踏んだらクビですと。それじゃあ仕事ができないので十分な対策をしたうえでどうするかっていうところに重点を置いてやっていったほうが現実的なのかなと。

大石その通りですね。

加納2.0でどんな影響があるかと言うと、低コストで便利な世界になるとは思っていて、やっぱりSuicaが登場して便利になったと思うし、最初はSuicaとかETCが出たときも大丈夫なのかハッキングはどうだとかっていう話はしてたと思います。でそれなりに小額であればリスクをとってJR東日本は信用する前提でSuica、2万円までだったらチャージできるので、それより便利になる。今後住民票がコンビニで取れるとかそういう話になっていますけど、まさにもう住民票が家でプリントできる、もしくはそもそも住民票要らないはじゃん、まぁマイナンバーが来たらそもそも住民票要らないじゃんっていう世界になるかもしれないですけど。文書ベースの限定されたところでしか取れないような情報っていうのがいろんなところで簡単に進んでいくのかなと。

大石私は海外に住んでいますが、いまでも平気で手続きには印鑑証明が必要で、それ以外だめみたいなのがまだあるんです。海外在住者は印鑑証明を発行してくれません。サイン証明というもあるんですが、日本の領事館に行かないと作ってくれない。ベトナムだと、ハノイまで行って、取ってくることになって、丸二日かかるのですごいコストもかかる。なんでこうなっちゃうのかなみたいな。会社の登記制度はすこし改善されて、代表者以外は印鑑証明は必要なくなりましたけれども、そういう意味ではガチガチのペーパー社会というのは何とかしてほしいもんだなと。

大石哲之
対談は赤坂にあるbitFlyer本社オフィスで行われた。

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