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特別対談:野口悠紀雄教授

In ビットコインニュース
7月 15, 2016
7月 15, 2016
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仮想通貨ビットコインについては否定的な評価が多く、Mt.Gox の破綻を受け、日本では普及はなかなか進まない。その反面、海外では「ブロックチェーン」の革新性と発展可能性は広く認められ、研究が進められている。ビットコインの課題と将来のあり方について、ビットコイン取引所 bitFlyer の加納裕三社長と小宮山峰史 CTO とともに、早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問の野口悠紀雄氏を訪ねた。

野口先生はビットコインを産業革命とインターネット革命に次ぐ第3の革命と位置づけているが、それはなぜでしょうか。

野口悠紀雄氏(以下、野口)決済手段はあらゆる経済活動の裏側にあり、世界の経済活動の半分を占めている。その半分が現在は非常に非効率的な状態です。極端に言えば中世以来、変わっていないと言ってもいいくらいだと思います。そこにITの革命が及んできたのですから。究極的には今の金融機関が全て淘汰されてしまうことは十分考えられる。決済手段が全て仮想通貨にかわってしまう可能性は十分あると思います。

ビットコインがそれだけ普及する為には何が必要でしょうか。

野口悠紀雄教授
野口悠紀雄教授

野口現在ビットコインは必ずしも普通の人が使えるような決済手段ではない。まだ初期の段階ですね。例えば秘密鍵を保持するのは自分の責任ですが、それは、普通の人には難しい。非常に荒削りの通貨です。その上、価格変動が大きく、価値の保存手段としては問題がある。従って、実際の店舗でこれを受け入れているところは非常に少ない。

加納裕三氏(以下、加納)確かに使いづらい。ビットコインというのはデフレ通貨と呼ばれていて、そもそも通貨の安定、ボラティリティ縮小を考慮して設計されていない。それはあきらめるしかないと思っています。その代わり必要であれば別のサービスで安定化させることも可能。例えばビットコインの貸し出しを始めれば、それでまたイールドカーブが形成される。それにより信用創造が始まり、取引が増えれば価格が安定する可能性がある。

小宮山峰史氏(以下、小宮山)スマホでもっと払えればいいと思いますよね。弊社としてはそういうものをつくろうとしている。スマホの中にビットコインが入っていて、払うときに外せばいいと。

野口その他、利用者にとってペイメントのコストの問題がある。ビットコインはコストが低いと言われているが、非常に低額の取引に関してはそうではない。本来の使い道はマイクロペイメントだと思っている。
ビットコインをユーザーが直接使おうとするからその問題がある。中間に何かがあってよいと思う。取引をまとめることによって、コストを低下させ、変動を安定化させることは十分可能なはず。

加納裕三氏
加納裕三氏

加納我々がまさしく(取り組んでいるプロジェクトに)、サイドチェーンという概念で、一端取引をまとめ、一日に数回、ビットコインで決済を行う、ということを将来考えていまして。
ここはオフブロックで、ただしこの取引のサマリーのハッシュみたいなのをブロックチェーンに書いておいて後で決済する。取引が増えていくと今のブロックチェーンだと耐えられないと思うんですよ。

小宮山bitWireというサービスでは、ブロックチェーンと関係ない世界でトレードし、最後の最後で決済をする。これは既に実用化している。

野口その問題を解決していただき、本当のマイクロペイメントが誰にでもできるような世界を作っていただきたい。

加納私たちの応用例ではSECOMとかのセキュリティ会社でモニターいっぱいをみている人がいる、と。これは外注で良いと思うのですよ。例えばインドの方に見てもらって問題があったらボタンを押してもらう。そうしたら日本の人が見る。時給100円で、月給が一万円になるのですが、十分暮らしていける。でも一万円送るのに今は最低でも4000円払わないといけない。新しいマーケットを生み出す事ができると思う。数千円から数万円の送金のところに大きな仕事があると感じるのです。

野口ITの世界で人間にしかできないところがある。外注できることが色々ある。でもそのためにはペイメントが必要。サービスのみならず貿易の面でもそう。例えば、フィリピンでものを作っている会社があるが、輸出しても輸出代金を回収する手段がない。アジアの大部分の国では銀行のシステムが普及しておらず、銀行振替ができない。だからお金を受け取る手段がない。お金を受け取る手段ができれば、アジア諸国の貿易と工業化が急激に進む可能性がある。これはビットコインの将来の非常に有望な発展先だと思う。

加納インフラが未成熟というのが、我々にとっては非常に魅力的。もともと固定電話がないところにいきなり携帯が入っていく、という感じで。インドネシアとか、国民所得が月収1万5千円くらいのところでは、ビットコインが意外とはやっている。銀行のインフラもない、クレジットカードももちろんありません、やっぱりなかなか所得があがらないところで流行るのでは、と期待がある。

野口銀行のインフラがないというのは、日本ではあまり認識がない。アフリカのケニヤで、農村地域にいくと銀行がないから支払いをするためにはバスにのって一日かけ、銀行支店で一日行列に並ばないといけないところで、エムペサという携帯電話で送金できるシステムが導入されたら、一挙に広まった。ブランチバンキングが普及していない国は圧倒的に多い。携帯電話が固定電話をジャンプしたような、蛙飛びの発展が金融に起こる可能性は十分にあると思う。全く新しい需要をいくらでも掘り起こせる。
Mt.Goxの影響で、日本ではビットコインはイメージが悪い。ビットコインの信頼性を高める措置が必要。Mt.Goxのような組織が破綻するまで放置され、なんの措置もなされなかった。

加納Mt.Goxの破綻を受け、自民党の中間報告に基づき、JADA(日本価値記録事業者協会、現JBA日本ブロックチェーン協会)という自主規制組織をつくった。私が代表をつとめ、5社が加盟している。官庁が直接法で規制することをやめることになったのは、マーケットが小さく、いままでの枠組みに入れるのは無理があるから。第3の新しいイノベーションなので、まずはいったん事業者がMt.Goxをうけてある程度ガイドラインを整備し、自主規制のルールをつくり、それに従うことになった。Know Your Customerレベルで。これで完璧だとは思わない。だが、日本では立法するのに時間が必要でもあり、JADAでやってください、というのが立て付けなので。

野口私はこういうところに政府が出てくるのはあまり望ましいことだとは思わない。自主規制で信頼性が確立されるのは大変重要だと思う。

加納その中で、倒産リスクが隔離されているか。例えばbitFlyerは監査法人に監査してもらい、本当にこれだけ残高があるか確認してもらう。だが、小さい会社だとなかなかそれができない。
そうなると顧客に担保できるのは、法の枠組みではなく、顧客にちゃんとルールを説明し、倒産リスクを説明して、最悪はこんな風になります、と。ただし、セキュリティはこうしています、と。責任義務を果たしたい、と。

野口Mt.Goxのとき、損害を受けた人が多かった。あれは理解し難いこと。秘密鍵をMt.Goxが管理していたと想像するが?

加納銀行方式とウォレット方式、と二つの概念があると僕は思っています。ウォレット方式はプライベートキー(秘密鍵)をユーザーさんが持っていて、紛失損等は全てユーザーさんの責任。銀行方式はあくまで残高を帳簿として総勘定元帳で持っていて、ウォレットにあるビットコイン自体は我々が管理する。つまり金庫も我々が管理する。当然、無くすことはないので、本人確認ができれば復元できる。ただし、総額だけは預かっておいて、それはレジャーで管理する。

野口そうすると倒産の危険が発生する。私はそれがいいのかどうか疑問に思っている。本来はウォレット方式であるべきだと思っていますが、秘密鍵の管理を個人が行うのはかなり難しい面がある。どちらがいいか、その二つの問題のバランスなんですよね、きっと。

加納bitFlyerは両方を提供しようとしている。銀行方式とウォレットは一長一短ある。倒産リスクと秘密鍵の管理。私の知人でウォレットにいれて、秘密鍵をなくして3000万円分のビットコインを無くした人がいる。非常に危ない。

小宮山私も最初につくったウォレットはなくしています。

加納私もなくしている。3万円ほど。
これを両方提供してユーザーが選べればいいと思います。そのときに十分そのリスクを説明して。慎重な人はウォレットでやるし。面倒くさい人は会社を信頼してもらって。

次世代ビットコインの実現に向けて技術的取り組みについてお話ください。

小宮山峰史氏
小宮山峰史氏

小宮山普通ビットコインをやっているところはbitcoindというフリーソフトを使っているのですが、それだと新しいサービス等がやりにくいと思うので、うちは独自のデーモンをつくってそのプロトコルを直接実装している。

加納署名に影響しないフィールドに何かを書き込むというのは自社開発じゃないとできない。

小宮山ビットコインってデータをやり取りしているだけじゃないですか。その読み方が決まっているのでみんなが信用している、という世界ですけど。使ってないフィールドがある。そこに余計なものを無理矢理突っ込んで新たな意味合いを持たせてカラーコインみたいに一見、普通のビットコインの取引ですけど、実はそこの読み方を変えてみると不動産の登記簿が置いてある、とか。今実際それができていて、それをみんなが認めるかどうか、という世界で。そこを今、一番攻めていきたい。

野口それは応用範囲が広くありますよね。不動産の登記とか自動車の売買とか、耐久消費財の売買とか、ですね。
小宮山時間制限とかもできるので、一年以内は有効です、とか。

野口耐久消費財の売買が可能になれば、それを担保にした消費者金融が可能になる。日本ではあまりその需要が認識されてないですが、アメリカでは非常に重要。今は低所得者が金融機関に受け付けてもらえない。信用履歴がないから。貧困に陥ってしまうと借りられなくなり、どうしようもなくなってしまう。そういう人たちも耐久消費財を持っていれば、自動車とか冷蔵庫を担保にして比較的リーズナブルな利息で借りる事ができる。貧困層の改善に重要な役割を果たすと考えられている。

ブロックチェーンを IoT で使う場合、技術的課題は。

小宮山ブロックチェーンの今の仕組みは10分間に一回承認するもの。これが1メガバイトしかできない、実は。10分間にトレード数では2,000~3,000個しか今はできない。IoT みたいなところにいくと、10分間に何億とかになってくるので、そこに問題がある。サイドチェーンにするか。また、ブロックチェーンは結局みんなが同意しているからこのプロトコルになっているわけなので、本当は1メガである必要はない。(編集部注:現在20メガまでの拡張が議論されている。)

野口IoT までいかなくても、スーパーマーケットでビットコインで決済するときに10分間待ってください、というわけにいかないですね。

小宮山しかも、10分というのは、実際今やってみると10分じゃない。

加納だんだん混んできて。一年前よりだいぶ遅くなっていまして。フィーゼロだともう全然承認されない。6時間待ちとかありますね。フィー競争になるんですよね。

小宮山1ブロック目に入る為になかなか時間がかかってしまいまして。今まで一番長く待ったのは2日間待った。

野口スーパーマーケットとか高速道路の料金なんか使えないですね。

加納そうすると、サイドチェーンは必須になってくるのかな、と思います。銀行方式に戻って信用リスクが発生するのですが。個人的には、僕は起業した時からハイブリッドしかないと思っていて。ある意味絶対的信用を持っているブロックチェーンと、スピードとか利便性を結合する。それがリスクを最小限にして利便性を最大化する方法なのかな、と思っています。

小宮山我々独自がサイドチェーンをやっているのも一つの解決法ですけど。ビットコインはBitcoin Improvement Proposalというのがあって、毎年何かしら変化している。今まではあまり破壊的な変化はなかったのですけど、これが問題になってきたら、どこかでサイズを10倍にしましょうか、という話が出てきて、みんながいっせいのせいでやれば出来ると思うのですけど。なかなか合意を取るのは難しいと思うのですけど。にっちもさっちもいかなくなったらどこかでくるかな、と。あるいは別のコインになるか。

野口ブロックチェーンについて心配しているのは、マイニングが永久に続くものなのか、というところ。ビットコインでは新規の発行量はどんどん減っていくわけですね。それで十分なマイニングのインセンティブを与えられるのか、というのが私は非常に疑問に思える。

加納これに関しては正にアダムスミスの見えざる手により、どこかで僕はバランスすると思っていて。例えばマイニングのフィーがなくなって、みんなマイニングから降ります。トランザクションの認証スピードが落ちます。そうすると誰かが入ってくる、もしくはフィーを多く出します。また、ブロックチェーンがどんどん重くなってヘビーになっていけば、サイドチェーンに発展していくし。マイニングのフィーが減るということは、特段問題ないと思っています。

野口でも重くなってフィーが高くなると利用者が減って悪循環に陥るのでは?

加納で、ユーザーが減ると今度はまた早くなるのでフィーが減っていくと。どこかでバランスする気がします。

野口そういう風に予定調和でいくのか。あるいは、問題はビットコインという一つのコインの中で解決する必要がなくて、移行してしまえばいいのかもしれませんね。それが一番いいかもしれません。

加納2140年の話なので。漸近してくるので30年くらいでレートが悪くなるのですが、その間に必ずビットコイン2が出てくると思います。

小宮山移行の手段として注目を浴びているのはプルーフ・オブ・バーンというものがありますね。ビットコインを持っている人がそれを絶対に取り出せないわけですよ。で、代わりにこちらで出すんですよ。

加納これは全く新しい発想ではないでしょうか。ものを燃やすことによって価値を創造する、価値を保存する、という概念は今まであったのでしょうか。

野口ブロックチェーンの基本的な発想であるプルーフ・オブ・ワークという発想からすればおかしくはないですね。プルーフ・オブ・ワークというのは要するに、面倒な計算作業をやる、と何かの犠牲を提供する、という意味なので。何かの犠牲を提供する、という意味では当然あり得ることじゃないですか。
しかし、今のプルーフ・オブ・ワークは馬鹿らしい面がある。役にもたたない計算をやっているわけですから。あれはやはりおかしい。まあ、画期的といえば画期的ですけど。
小宮山それを役に立つ計算に変えているのがネームコインとか。その計算を無駄にしない、と。

加納少なくとも、ゲノム解析とか世の中に役立つものでプルーフ・オブ・ワークをさせるのが次のステージなのかな、と思います。

最後に bitFlyer への注文はありますか。

野口普通の人が使えるようなシステムを作ってほしい。それによって日本での利用をどんどん広めていきたい。2020年の東京オリンピックで、東京に来た外国人がビットコインを使えないと知ったら、日本はなんて後進国なのか、と思われるので。それまでに是非ビットコインフレンドリーな国を作ってほしい。

2020年、日本でのビットコインの普及はどうなっているでしょうか。

加納ある一定数のユーザーが–外国人に限らず–日本の何十パーセントの方が使って利便性を供述していただけるところにいけたらいいな、と思っています。
小宮山そして、皆さんの携帯に必ずbitFlyerのアプリが入っていてビットコインが入っている、と。

対談:野口悠紀雄教授
左から野口悠紀雄氏、加納裕三氏、小宮山峰史氏
プロフィール
  • 野口悠紀雄氏

    東京大学工学部卒業、イェール大学Ph.D(経済学)。
    大蔵省、一橋大学教授、東京大学先端科学技術研究センター教授、同先端経済工学研究センター長、スタンフォード大学客員教授、2005年4月より早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを経て、早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問及び一橋大学名誉教授。 http://www.noguchi.co.jp/

  • 加納裕三氏

    株式会社bitFlyer代表取締役。
    東京大学大学院工学系研究科修了。ゴールドマン・サックス証券にてエンジニアとして自社決済システムの開発を行う。BNPパリバ証券を経て、2007年よりゴールドマン・サックス証券に再入社し、デリバティブ・転換社債トレーダーとして機関投資家向けマーケットメイク、自己資産運用や企業の資金調達を行う。2014年1月に株式会社bitFlyerを共同設立。日本ブロックチェーン協会(JBA)の代表理事。

  • 小宮山峰史氏

    株式会社bitFlyer取締役CTO。
    早稲田大学理工学部卒業。株式会社コナミ、ソニー・コンピュータエンタテインメントを経てゴールドマン・サックス証券に入社、決済システムを構築。数十の業務システムの設計を手がけ、金融、クラウド技術、暗号技術、ミッションクリティカルなシステムを得意としている。2014年1月株式会社bitFlyerを共同設立。

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